ニシヤマ ガンパウダー ショップ

ねずみをくわえたわかりやすい猫が路地へと

走ってゆく。天満の商店街は雨で湿気たりしない。

たたんだ傘を提げて環状線の駅まで、

茶色いブーツは乾きながら進む。

ニシヤマガンパウダーショップ。ウィンドウには

剥製のキジとか、枝にとまったワシとか、 が

黄ばんだ壁紙にはばたけないでいて、店の奥の

砂利の敷かれた中庭から狭い空が見える。

夏を思い出させる、におい。

休日の環状線、窓際に立ち、吊り広告のことばを

二十分のあいだ舌先で転がして胸におさめていく。

乾いたブーツの底で、喫茶ケニヤまで。

傘はたたんだまま見上げた曇った色の空にむかう鉄塔の

少し、先を、ねらう。


(2006年ごろの作品)

Poetry Marking

大阪を中心に活動する詩人・ 河野宏子のサイトです。

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