導火線
足りないものなんてないはずなのに
欲しいものを見つけようとしてる
流行の服はもういらないから
誰にも歌えない歌がほしい
地下鉄のリズムでふるいにかけられる希望
改札までの繰返す広告
ビッグスマイルのキャンペーンガールに尋ねてみる
わたしだけの歌はどこで買えますか
ゆだるほどに暖められた地下街をあるく12月
ここだってきっと永遠じゃない
どこからともなく漂ってくるガスの匂い
気づかないふりをしても
死はいつだって近くにある
誰だって等しく、永遠とはまるっきり縁がない、だから
目に見えない導火線を探してる
広場の隅では女たちが
あからさまな欲望を待ち伏せている
値段を決めるのは女の裸そのものではなく
見境のない欲望のほうだ
つかまりそうでつかまらない
そうやって吊り上げられていくゲーム
使い古されたどんな言葉よりも雄弁な彼女たちの
重そうなまつげの瞬き
足りないものなんてもうないんだよ
だって見つけてしまったから
それは雑踏のうわずみ
それはふいを突いたつぶやき
それは解き放つポエジー
くず鉄に埋もれた魔法のランプ
それはピカピカの銃
それは長い長い尾をひく流れ星
それはでたらめだったはずの奇跡
フリーサイズのガラスの靴
むせかえる香りの波間
iPod の音量を上げて進む
あなた以外には決して歌えない歌、
涸れることなく続いている
他の誰も決して歌えない歌
かわることなく、連なっていく
足りないものなんてないはずなのに
欠けてるとこを見つけようとしてる
流行の服ばかりが君に似合う訳じゃない
気づかないふりはもう辞めて
自分の中の澱みに深く手を差込んでみるんだ
ほんとうにほしいものは君の手の中でだけ光る
もつれ合う足音に惑わされないよう
iPodの音量を上げて進む
あなた以外には歌えない歌
涸れることなく続いていく
他の誰も歌えない歌
変わることなく、つらなっていく
一年中蓋のついた地下街を歩く
いつの日かここが遺跡になるんなら
今のうちに何か刻んでおこうか
時限爆弾よりもずっと開放的なバカバカしさで
立ちこめるガスに引火するんだ
金色の火花をあげて大笑いするときが
もうたぶん、そこまで来てる
足りないものなんてもうないんだよ
だって見つけてしまったから
それは雑踏のうわずみ
それはふいを突いたつぶやき
それは解き放つポエジー
くず鉄に埋もれた魔法のランプ
それはピカピカの銃
それは長い長い尾をひく流れ星
それはでたらめだったはずの奇跡
フリーサイズのガラスの靴
どこにも売ってない
たった一つの歌
(2006年ごろの作品)
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